[背景:黒] 何でだろう……眠れない。 [背景:二階自分の部屋] 散歩でもするか。 [背景:旅館の外観] 深夜だし肌寒いかと思ったけど、これならシャツ一枚で大丈夫だったな。 とりあえず海まで行こう、と歩き出す。 [背景:道3] 暗いが、月の光だけでもまぁ、よく見えるもんだ、と感心する。 虫の鳴き声が、風が、心地良い。 夏輝「いてっ」 ……何故羽虫というのは、目をめがけて飛んでくるのだろう。 [背景:道2] 始めに旅館に向かって歩いているときは物凄く遠く感じたけれども、今はそう遠く感じないし、嫌だとも思わない。 昼間ではないのと、荷物を持っていないことが大きな原因だろう。 潮の匂いがしてきた。そろそろ海に出るだろう。 月明かりに照らされた夜道が、少しだけ不気味だ。 [背景:] …………… 気持ちいいな。 歩いたので汗ばんだ体を、潮風が冷やす。 [背景:黒] ……いや。 ……まて。 ……違う。 [背景:海] (風はいつしか止んでいる。:消す)(いつの間にか、風は止んでいた) だが、涼しいのは事実だ。 ……いや、(涼しいと言うよりも)寒いのだ。 寒いといっても気温が、ではなく、体の芯が凍えるように冷たい。 (何か、嫌な予感がした。) 汗が滝のように流れてくる。動悸が早くなる。 ……ザッ。 夏輝「!」 直感的なもので俺は、足音を立てないように近くにあった民家の庭に転がり込んだ。 選択は正しかった。 ……ザッ……ザッ。 ……ザッ……ザッ……ザッ。 複数人の足音の様な物が近づいてくる。確かに人の足音だ。 身を伏せ、月明かりに目を凝らす。 足音の主が姿を現す。 7人。 7人だ。 7人の人間が、何だかダルそうな、ぎこちない足取りで歩いていて、目だけが何かを探すようにキョロキョロと、動いている。 年も、人相もバラバラだった。漁師の格好の人、海女の格好の人、浴衣姿の人。その全てがびしょびしょに濡れいている。 確かに人の形をしているが、人目で分かった。彼らはもう人間では無い。 目には光が無く、口は半開き、肌の色は不自然な程の白。所々に海草や、フジツボが張り付いている。 否、生きている人間にはありえないことだ。 徐々に、近づいてくる。 ……ザッ……ザッ。 ……ザッ……ザッ……ザッ。 息を殺し、身を限界まで伏せる。頭の中で、理性という名の警報が鳴り響き、冷汗がダラダラと(首筋を)流れ落ちる。 彼らに見つからないように、強く願う。見つかったら俺は、それで終わりだということが直感で分かる。 …………… [背景:黒] …………… [背景:海] 彼らは一通り何かを探すように辺りを歩き回ると、7人揃って海の中へさも当然のことのように潜って行った。 …………… [背景:黒] ちなみに俺はその後、一時間ほど動けなかった。