【背景:港】 港に集まっているのは、漁師の皆さんと夏樹くん。 なにやってるのかなぁ? オッサン「今年こそ、必ず捕まえてやる!」 野郎共「おぉおおおおおーーー!!!」 夏樹「ぉ〜!」 みんな威勢がいいなぁ。 夏樹くんだけは違うみたいだけど……。 オッサン「おう坊主!元気がねぇーな。      海の男ってのは威勢が大事なんだよ!      威勢がな!」 夏樹「は、はぁ。……俺、なんでこんなことしてるんだろ?」 オッサン「よーし、沖に出るぞー!全員船に乗り込めー!」 うわぁ、なんか楽しそうだな〜。 よーし、私もついていっちゃおっと。 夏樹くん以外には見えないから、バレないよね? 【背景:船内】 船の甲板では漁師の皆さんが、網やらなにやらをチェックしている 。 夏樹くんは、甲板の真ん中で腕を組んでその様子を見守っているオ ヤッサンとなにやら話してるようだ。 私は夏樹くんにバレないように、オヤッサンとの会話の聞こえる位 置まで移動した。 夏樹「ところで、オヤッサン。なんで今日はこんなに張り切ってる んですか?」 私も気になってたとこ〜。 ナイス質問だよ。夏樹くん。 オッサン「あ?そりゃ、カジキングが来るからに決まってるだろ」 夏樹「カジキング?    なにそれ?おいしいの?」 オッサン「そりゃ、うまいだろうなー。      あんなサイズのカジキマグロはあいつ以外見たことがね      ぇしな」 へー、すっごく大きいカジキマグロだからカジキングか〜。 微妙なネーミングセンス……。 夏樹「へー、そうなんすか。    で、そんな大物との対決になんで俺みたいなのを呼んだんで    すか?」 オッサン「カジキングとは去年、島の男手総動員で対決したんだけ      どな、それでもギリギリ釣り上げられなかったんだ。      それで、猫の手でも借りたい状態のところに坊主が来た      ってわけだ。」 夏樹「へぇー。    つまり、俺は猫の手と?」 オッサン「まあ、気にするな!      猫の手でも、手は手だ!」 夏樹「意味がわからん……」 ……私もだよぉ。 漁師A「オヤッサン!出航の準備できました!」 オッサン「よーし!船を出せ!今日こそ、持ち帰るぞカジキング! !!!」 野郎共「おぉおおおおおーーーーー!!!!!!!!」 夏樹「ぉ〜!」 歳のわりに、相変わらず元気がない夏樹くんと、歳のわりに元気の ありすぎる漁師さん達と、男しか乗れないはずの漁船に乗り込んだ 私を乗せて、船は沖へと向かっていった。 【背景:船内】 オッサン&野郎共「あ〜♪海の男は背中で語る〜♪          荒れ狂う〜♪波の中〜♪」 漁師さん達は船を進めながら歌い始めた。 うぅ、なんか迫力が八割の歌だなぁ。 夏樹くんは、元気な漁師さん達の横でがっくりと肩を落としちゃっ ていた。 その気持ち、わからなくもないよ。 と、船が突然止まった。 漁師2「オヤッサン、カジキングのポイントに着きましたぜ」 オッサン「おう!よっしゃー、野郎共!気合入れて行くぞ!」 野郎共「おぉおおおおーーーー!!!!」 おー! ほら、夏樹くんも! 夏樹「うぇーい!!www」 あれ?なんか、テンションおかしくない? オッサン「よし、撒き餌を始めろ!      特大竿の準備はいいな?      救い上げる為の金網の準備も忘れるなよ!」 漁師3「どれも準備完了です、オヤッサン」 漁師4「撒き餌完了しました。     あとはレーダーが捕捉するまで待つだけです」 オッサン「よーし。果報は寝て待てだ。      全員寝ろ!」 夏樹「ねぇーよ!」 野郎共「がっはっはっはっは!!」 流石は夏樹くん!ナイス突っ込み! 夏樹「あははははは……はぁ〜。    正直、この空気ダメかも……」 え、私は好きだけどな〜? そういうと夏輝くんは、その場にへなへなと座り込んでしまった。 ファイトだよー! ………………。 …………。 ……。 ゆらゆら〜♪ ゆらゆらゆら〜♪ 撒き餌をしてから十分程経った。 私は波の揺れ具合を楽しもうにも、文字通り、地に足が着いていな いので、仕方なく歌で雰囲気を作り出していた。 ゆれている〜♪ 私は絶好調揺れまくり〜♪ 波の力は恐ろしい〜♪ コロニー落としより恐ろし―――きゃっ!! 漁師F「オヤッサン!パターン青!カジキングです!」 オッサン「うむ」 漁師冬月GONZO「三年ぶりだな」 オッサン「エヴァ―――、じゃなくて、網を構えろ!      全員甲板に集合しろー!」 わ、カジキング来ちゃった。 夏輝くーん、来たよー! 夏輝「ZZZZzzz……。」 うぅ、寝てる。 熟睡だし……。 よーし、ここは私が起こしてあげなくちゃ。 ちょっと痛いかもしれないけど、愛の鞭なんだからぁー。 えーい。 ベシ 夏輝「うがぁ!!な、なんだ!?    なんで長靴が俺に体当たりしてきてるんだ!?    つーか、カジキング来てるし!!やべぇ!!」 わーい。 作戦成功〜。 ナイスだよ、長靴くん。 オッサン「早く坊主も甲板に来い!      カジキングがかかったぞ!」 夏輝くんはオヤッサン達のところまで走っていくと、船員総出で竿 を引く作業にかかった。 野郎共「うおおおぉおぉぉぉおぉぉ!!!!」 すごい雄たけびを上げて竿を上に振り上げようとするが、重量30 0kgを楽に越えるカジキングはそう簡単に上げさせてくれない。 流石、キング! 名前なだけはあるね。 私は夏輝くんからは見えない位置まで移動して、甲板のみんなを応 援する。 頑張れー! いけー! そこだー! まあ、夏樹くん以外には聞こえないんだけどね……。 夏樹くんはどうやら竿の方に集中していて聞こえてないみたい。 竿を持つみんなの手が真っ赤になってくる。 あわわ。大丈夫かな? 顔は手の数倍も真っ赤で、熟れたトマトを連想させる。 少し、おいしそうかも……。 野郎共「おおおおおおおお!!!!!!」 いけー!いけー! 竿の先がプルプルと震えている。 重力に逆らおうとする男達と、重力を味方につけるカジキング。 互角の戦いだった。 ―――バキッ!! 異音が鳴り響く。 何事かと、竿の上部を見ると、上半分とカジキングが着水して、大 きな水しぶきをあげていた。 ザバーン!! わ、折れちゃった……。 野郎共「おおおぉおおぉぉぉぉ!?」 漁師G「くそー!今年も逃げられたか……」 漁師K「ちくしょー!……グスン」 夏輝「うわー、あんなの釣れてたら、船沈んでたぞ?    良かった〜。俺はまだ生きてる!    はっはっはっ!」 みんなは悔しがって甲板に拳をうちつけている。 ただ、夏輝くんだけは変なテンションで笑っていた。 オッサン「がっはっはっはっはっは!!」 あれ?笑ってるのは、夏樹くんだけじゃないみたい。 オッサン「今年もやってくれたな!我がライバルよ!      来年もまた真剣勝負だぁああああああ!!!!!」 オヤッサンはカジキングが泳いでいった方へと叫んでいる。 夏輝「真剣勝負って……。    一対多数じゃないっすか……。」 漁師B「細かいことを気にしてちゃ、海の男になれんぞ!坊主!」 夏輝「いや、ならねぇーし」 野郎共「がっはっはっはっはっ!!」 漁師A「やっぱり、坊主はおもしろいな!     どうだ?このまま船員にならないか?     ね?オヤッサン?」 オヤッサン「あぁ。       坊主は結構見込みがあるぞ。       五年もすれば立派な海の男になれるだろうよ!」 夏輝「冗談じゃないっす」 うわー、きっぱり言っちゃったよ。 オヤッサンとか怒らないかな?あわあわ。 オヤッサン「がっはっはっ!       そう言うと思ったよ!       がっはっはっはっ!!」 野郎共「がっはっはっはっ!!!!」 うーん、何で上機嫌なんだろ? やっぱり男の人ってよくわかんないや。 【背景:船内】 船は港に向かってスクリューを回す。 暑苦しい海の男達と、病弱な少女の幽霊を乗せて。 これぞ、まさにゴーストシップ。 そう思いながら横目で、首をかしげて必死に男心を理解しようとし ている少女の幽霊を眺めている俺は、当然、夢縁 夏輝その人なわ けで。 正直、入船の時から気がついてたんだけどね……。 まあ、あんな風に、きゃっきゃきゃっきゃと嬉しそうにはしゃぐ少 女のお邪魔はしたくないので、暖かく見守ることにしたと。 そういうわけ。 けど、見てみぬフリってのは意外と疲れるもので、寝てみたりもし たんだけど、そしたら長靴飛んでくるし……。 あれは楓なりの優しさなんだから咎めはしないけど。 それにしたって……、長靴って……。 ふと右を向くと、少し遠くから顔だけをひょっこりとウサギのよう に覗かせて、こちらの様子を伺っている楓。 ……はぁ。 バレバレだっつの! 楓「わ!わ!夏輝くんがこっち見た!   見つかってないよね?   うん。大丈夫だよね?」 それに楓のやつ考えてること声に出しすぎな。 いくら幽霊で他人に聞こえないからって、清理さんや俺には聞こえ るんだから……。 まあ、そういうとこ全部ひっくるめて「楓」だからよしとするか。 夏輝「あぁ〜あ、なんか塩でも撒きたい気分だなー。    ちょっくら甲板にでも撒いてくるかー」 塩撒きたいってどんな気分だよ、俺。 楓「はわわ!夏輝くんが塩撒き衝動に駆られてるよぅ〜。   どうしよ!?どうしよ!?」 うしし。 やっぱ、楓はからかい甲斐があっておもしろい! 漁師C「おい!大変だ!坊主の野郎が塩撒き衝動に駆られたぞ!     オヤッサン例の処置法を!」 ……え? オヤッサン「おう、任せろ!       野郎共!取り押さえろ!       一番効くビッグバンフライでいくからよ!!」 ……は? 気がつくと、両腕両足にはガッチリと筋肉ロックが決められていた 。 これって……俺ピンチ? 漁師F「少し痛ぇーけど我慢しろよ?」 漁師J(ジョニー)「塩撒キ衝動ハ、海ノ亡霊ガ取リ付イテルトキ           ニ、起コル現象デース」 楓「塩〜、怖いよ〜。   怖いよ〜、怖いよ〜」 楓は船の隅っこで、頭隠して尻隠さず状態で震えている。 役立たずー! オヤッサン「ビーーーーーーーーーーーッグ」 あぁ、今までありがとう、紗耶、もも、あやめ姉、清理さん、楓、 ついでに安部さんも。 オヤッサン「バーーーーーーーーーーーーーン」 俺はこれから旅立ちます。 楓のお仲間になっちゃいます。 皆、今まで本当にありが――― オヤッサン「アターーーーーーーーーーック!!!!!」 夏輝「ぐはああぁああああああぁあぁあぁぁあ!!!!」