;僕と君の夏休み ;共通:「プロローグ」 ;背景:海上の船 ;BGM:なし ;SE:ship 目の前には、大海原が広がっている。 そして俺は、波に揺れる船の上に居る。 見上げれば、雲ひとつない青空。そして照りつける夏の太陽。 目を落とせば、どこまでも深く続く青い海。 とても雄大な風景に、俺は思わず感動している。 普段なら嫌味のひとつでも言いたくなるような、夏の刺すような暑い 日差しすらも、今の俺には清々しく感じる。 なんてポジティブな俺。 昨日まで部屋に引きこもって、ピザポテトを食いながらエロゲをするだけの生活をしていたとはとても思えない。 景色というものは、こうも人を変えるものか。 夏輝「……なんてな」 たまには哲学的なことを考えてもバチは当たらないだろ。 なんか、いつまでもこうしていたいな。 ;SE:"相模線" ぴんぽんぱんぽーん♪ 夏輝「なんてお約束なタイミング」 アナウンス「本船は、あと5分ほどで美富島に到着いたします。 お降りの際は、お忘れもののないように……」 船内のスピーカーから、女性の声が聞こえてきた。 あと5分、か。 夏輝「もうすぐ、見えるのかな」 俺は無駄と思いつつも、デッキの手摺から身を乗り出し、 船の正面に向けて目をこらした。 夏輝「あれ……かな?」 正面に、小さな点が見えてきた。 小さな、とても小さな島。 俺は忘れているが、俺が生まれ育った島。 とくん。 思わず、胸が高鳴る。 島の姿が、ゆっくりと大きくなっていく。 とくん、とくん。 その姿と共に、期待が膨らむ。 この島で、何かが俺を呼んでいるような気がする。 とても楽しい何かが。 ;BGM:"夏色の追憶" ;背景を白に "島の姿が、細かいところまで見えてくる。" "小さな家、港、そして山。" "何が、俺を待っているんだろう。" "何が、俺を呼んでいるんだろう。" "夏休みも半分終わった今。" "ようやく、夏が――始まる" ;フェードイン ;背景:船 ;BGM:"流れゆく景色" ;SE:"ship" そんなわけで、俺はなぜか2週間を、生まれ故郷(らしい)の美富島で過ごすことになったわけだが質問ある? 質問:なんで島に行くことになったんですか? 夏輝:親父が商店街の福引で海外旅行を当ててしまったらしいです。 質問:両親だけですか? 夏輝:親父が親友であり、美富島にある民宿の経営者である  小翠さん夫婦を海外旅行に誘いました。  俺はそこで留守を預かることになったらしいです。 質問:つまり那々志さんの民宿は無人? 夏輝:俺の幼馴染(らしい)である、紗耶という娘がいるようです。 質問:ということは一つ屋根の下に二人きり? 夏輝:甘い生活が待っているようです。フヒヒ 質問:危険なのでは?(特にお前が) 夏輝:民宿に来いといったのは紗耶らしいです。  那々志さんに口止めされてますが。 質問:行動安価が見当たりません。 夏輝:……もういいよ。 ;背景:港 ;SE:"波の音港" そんなこんなで、港に着いた。 俺は期待に胸を膨らませ、船から降りる。 那々志さんの話では、紗耶が迎えに来てるはずだが…… 見渡しても、女の子の姿なんてどこにも見えない。 他に乗船していた乗客たちの姿が見えなくなるまで、 とりあえず待ってみたが……誰もいない。 あ。テトラポットの上に猫がいる。 これがほんとのウミネコか。 ……くだらねぇ。 オッサン「ようボウズ。どうした?」 暫く港で呆然としていると、おっさんが話しかけてきた。 夏輝「あ、いえ。迎えを待ってるんですが」 オッサン「来ないってか。どこ行くんだ?」 夏輝「えっと……たしか、じょ……じょる……」 オッサン「叙瑠樹か?」 夏輝「そう。それそれ」 オッサン「叙瑠樹は休業中だぜ? 夫婦そろって海外旅行とか」 夏輝「あ、はい。わかってます。那々志さんに、留守を預かれって言われてて」 オッサン「ん? おめぇ……紗耶ちゃんの友達なのか」 夏輝「昔、この島に住んでたことがあったみたいで」 オッサン「おお。っつーことは、おめぇ夢縁さんとこのボウズか」 俺のことを知ってる人がいるのか。 俺なんて、さっぱり記憶から抜け落ちてるのにな。 まあ、人より忘れっぽいところがあるのが俺のいいところなんだが。 オッサン「んじゃ、道教えてやるからよ。ちょっと待ってな」 おっさんは近くにあったおんぼろな建物の中に入っていった。 オッサン「待たせたな。旅館までの地図だ」 と言って俺に持たせたのは、大きなスチロールの箱だ。 夏輝「これが……地図?」 中で何か動いてるんですが。 オッサン「これはついでだ。叙瑠樹に持ってってくれ」 おっさんは言いながら、ようやく地図をくれた。 オッサン「今朝獲れたてだからな。紗耶ちゃんに食わせてもらえよ」 夏輝「あ、はい。ありがとうございます」 オッサン「じゃ、頑張ってな」 夏輝「はい。失礼します」 こうして俺は、出鼻をくじかれた形で島を歩き出したのだった。 ;フェードアウト ;フェードイン ;背景:山道 ;SE:蝉の鳴き声 ;SE:semi オッサンに貰ったスチロールの箱が重い。 つか、まだ中で動いてるんですけど。 何が入ってるんだろう…… 覗いてみよう。 …… まあ、普通の魚だよな。うん。 見なきゃよかったと思わない物体でよかったよ。 ;フェードアウト ;フェードイン ;背景:山道 自販機なんて気の利いたものはないよな…… 港でジュースでも買ってくればよかった。 喉がからからだぜ。 汗がシャツをびしょ濡れにしていく。 夏輝「暑い……」 言ってどうなるものでもないが、言いたくなる。 そして言えばさらに暑くなる。 地図によると、あと半分か。 ;フェードアウト ;フェードイン ;背景:山道 汗って、喉の渇きを癒せるのかな。 ……俺が馬鹿だった。 余計に喉が渇いた。 いつの間にか、スチロールの中の物体が動かなくなっている。 きっと、あの丘の向こうには梅の林があるに違いない。 きっとそうだ。 ;フェードアウト ;フェードイン ;背景:山道 かゆ  うま ;フェードアウト ;フェードイン ;背景:民宿外観 やっと……着いた。 いかにも安宿という風貌。経営、大丈夫なのか。 俺がそんなことを気にしても仕方が無い。 というか一刻も早く水分を吸収しないと、俺もスチロールの中の魚も 干物になってしまう。 ;SE:ガラス扉を叩く音 ;SE:"ドアノック1" 扉をノックしても……出てこない。 誰もいないのかな。 ;SE:ガラス扉を叩く音 ;SE:"ドアノック1" やはり出てこない。 俺の体に警告灯が灯る。ぴんち。 ;SE:ガラス扉を叩く音 ;SE:"ドアノック1" 誰か出て来いやゴルァ! もういい! 許可を得ている不法侵入じゃない! 出てこないほうが悪いんだ! ;SE:ガラッ ;SE:"玄関(引き戸)開閉" ;背景:民宿広間 夏輝「誰かいませんかー?」 しーん。 夏輝「おーい」 しーん。 夏輝「……」 もういい。上がろう。 旅館の中なら、台所か何かあるだろう。 水でいい。なんでもいい。水分を。俺と魚に。 スリッパに履き替え、俺はよろよろと旅館の中に入っていった。 ;背景:調理場 なんかやたら豪勢なキッチンを見つけた。 旅館といったらこんなものなのかな。 キッチンとか入ったことないからわかんねーや。 スチロールを調理台の上に置き、ぐったりとしているお魚さんに水を与える。 あ。ちょっと復活した。よかったよかった。 なんだかこの魚に親近感が沸いてきた。 よし。こいつの名前を着けることにしよう。 …… やめた。めんどい。 冷蔵庫……は勝手に開けたらマズいな。 ;SE:水が蛇口から出る音 ;SE:"水道1" そこらへんにあったコップをひとつ手にとり、蛇口を捻る。 ;SE:ごきゅごきゅと水を飲む音 ;SE:"水飲み音"][ws 夏輝「俺復活ぅぅぅぅ」 水がこんなに美味しいとは! 感動した! さて、次は汗だくで気持ち悪いから顔を洗いたい。 俺は洗面所を探す。 ;背景:洗面所 ;SE:"シャワー" 小さな旅館だ。洗面所もすぐに見つかった。 そして気がついたのだが、洗面所の隣に浴室があるらしく、 そこから水の音が聞こえる。 確か、この旅館には紗耶しかいない筈。 ……ゴクリ。 これをあければ……未知の世界が待っているはず。 …… いやいや。さすがに犯罪だ。 理性的な俺はそんなことしないぜ。 …… しないってば。 なんだ……? 気がつけば、俺の右手が浴室のドアに手をかけようとしている。 く……クソ! 収まれ俺の右手! ;SE:ガラッ ;SE:"ドア開け" ガラッ ;紗耶バスタオル 表情:びっくり 俺が馬鹿なことをしている間に、ドアが向こうから開いた。 そして、バスタオルを体に巻きつけただけの女の子が、 きょとんとした顔で俺を見ている。 俺も硬直。 …… 夏輝「あ、ご」 ;紗耶バスタオル 表情:怒り ごめん、と謝ろうとするよりも先に 女の子の見事なハイキックが俺の首筋を捕らえた。 ;SE:"倒れる音" 夏輝「ぐ……ぉ……」 この島で俺を待っていたのは……この痛みか。 ;背景:black 意識が遠のいていく…… ;OP