;僕と君の夏休み ;共通:「阿部リーヌ」 ;BGM:"山の中" ;背景:"公園夕" 一息ついた俺は、何気なく公園に寄ってみることにした。 昼間とは打って変わって、煌々と紅色に燃える太陽。 それに照らされた番いの鳥が、二つの影を並べて落としている。 子供はもう、帰る時間だ。 夏輝「まぁ、さすがに俺を子供というのはないしな」 ;背景:"夕焼け空" 公園に来るというのも、随分久しぶりな気がする。 小学生くらいの頃を思い返してみれば、午前授業の土曜日には毎日のように友達と公園で駆け回っていたような。 今となっては、屋内に娯楽も増えた。 スイッチを一つ入れるとパソコンが起動し、 ネットに流れたありとあらゆるゲームがプレイできる。 マンガだって、昔とは比べようもないほどに増えた。 夏輝「なんだかなー」 ;背景:"公園夕" 一抹の淋しさ。 恐らく、もうあの頃のように皆で鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり、木登りをしたりなんてことはないんだろう。 ……そういえば、小学校の頃に仲が良かったアイツら、どうしてるんだろうか? 郷愁、とは違うと思う。 それでももう、そう出会うことの無い友達に思いを馳せて。 夏輝「……もーいーかーい」 逃げる人のいない、ただ一人だけのかくれんぼ。 夕焼けが、公園のベンチを照らす。 まるで、スポットライトのように。 ?阿部「もーいーよー」 ;BGM:"阿部のテーマ" 夏輝「……誰だよ」 ベンチに座っていたのは、青いツナギを地肌に着込んだ男 ……いや、字面的には漢、って感じか。 イケメンというほどではないかもしれないが、 それでもまぁ、ブサイクではない。 ただ魅力を挙げるとするならば、その体つきか。 ガッシリとした体に、太い腕。 銃弾くらいなら跳ね返しそうだ。 ?阿部「俺は阿部 高和。よろしくな、少年」 夏輝「はぁ」 阿部「いやぁ、今日も暑い、暑いねェ」 夏輝「そう、ですね」 なんだこの人は。 島の人たちは確かにフレンドリーだったが、 このフレンドリーさはなんか、違う。 話し方的には海辺でのナンパのようだ。 阿部「ところでさ、名前はなんていうんだい?」 夏輝「え? 夢頼 夏輝ですけど……?」 阿部「そうかそうか、じゃあナッちゃんだ!」 夏輝「何で!?」 阿部「フッフゥ……良いね良いね良いね、実に良いよ。ちょっと ばかり筋肉は足りないけど、それでも君、良いねぇ」 ゾクリ、と。 首筋に冷たい息を吹きかけられたような気がした。 ;BGM:"Hurry 本能的に、一歩、後ずさる。 阿部さん、立ち上がる。 阿部「いやぁ、君の雰囲気は本当に最高だよ……新感覚だ」 ツナギの一部――主に股間――が、膨れ上がっている。 うわ、でかいな……正にマグナムじゃねぇか…… 阿部「さぁて、それじゃ……」 阿部「や ら な い か」 夏輝「アッー!」 は、速い!? 気がつけば阿部さんの顔が正面に来ており、阿部さんの右手がシャツの裾から背中に侵入している。 まずい、じつにまずい! 夏輝「まままま待った!! 俺、そっちのケはありませんから!!」 阿部「なァに、すぐに良くなるさ! はっは! 俺はノンケでも食っちまうんだぜ!!」 話を聞いてくれ、頼むから! 今度は左腕が俺の頭を掴み、撫で回す。 グシャグシャと、まるで子供をあやすように。 夏輝「た、たすけてぇぇ!!?」 純潔の花が、散らされる…… 阿部さんの唇がどんどん近付いてくる…… さよなら、俺の、ファースト・キス…… 紗耶「何やってるんですか、阿部さん」 阿部「おっと」 ;BGM:"変わらない日常" いきなり俺と阿部さんの間に入ってきたのは、紗耶の掌だった。 夏輝「さ、紗耶!!」 阿部「お?なんだい、紗耶ちゃんの知り合いかい?」 紗耶「はい、残念ながらウチの居候です」 阿部「そいつぁ羨ましいな……だがまぁ、紗耶ちゃんの知り合いなら仕方ないか。今日はこれくらいにしておくよ」 すっと引き抜かれる阿部さんの太い腕。 阿部「落ち着いて考えると、無理やりヤっちまったら嫌われちまうしな」 夏輝「はぁ、はぁ……マジでありがとう、紗耶」 紗耶「全く。阿部さんも少しは自重してくださいね?」 阿部「ははは、努力はしているんだけどね。 ついつい暴走してしまったよ」 つい、で俺の純潔を奪おうとしないでくれ…… 阿部さんはひとしきり笑ってから、公園に突き立った時計を見る。 時刻は午後五時四十分。 阿部「おっと、もうこんな時間か。俺はそろそろ退散するよ。 じゃあな、紗耶ちゃんとマイハニー」 紗耶「はいはーい」 夏輝「誰がマイハニーか……」 軽トラの扉を開けて颯爽と乗り込み、去っていく。 何故か最後に投げキッスを寄越してから。 夏輝「……で、阿部さんって何者?」 紗耶「島の中で自動車修理をやってるのよ。 自動車に限らず機械類は大概見てくれるんだけどね。 親切なお兄さん、って感じよ」 夏輝「…………ホモ?」 紗耶「アンタはそれ以外に見える?」 夏輝「無理だ」 紗耶「確かに性癖は特殊だけど、島での行事とかには本当に真剣に取り組んでくれるし」 紗耶「山で遭難者が出た時は誰よりも最初に山に飛び込むような人ね」 夏輝「そうですか……」 紗耶「まぁ、気にすること無いんじゃない? 別に被害にあったとか言う人は今まで誰もいないしね」 ……俺、一人目ですか?