(BGM:変わらない日常、立ち絵:喜1 中央表示、背景:叙留樹の居間(夜))  夏輝「ごちそうさまでした!」[pcm]  紗耶「はいはい、お粗末さまでした」[pcm]  美味でした。[pcm]  ちなみにメニューはご飯+味噌汁にカツオのタタキと茄子の和え物でした。[pcm]  ――美味でした。[pcm]  (暗転した後に立ち絵消去、背景:叙留樹・居間(夜)、暗転解除)  グォングォンと音を立てて首を振り続ける扇風機の前。[pcm]  面白くも無いテレビ番組を眺めながら、俺は無為に時を過ごしていた。[pcm]  夏輝「今日は一日、何事も無く過ぎました」[pcm]  善也善也。[pcm]  良く冷えた麦茶を飲みながら、グデグデと。[pcm]  外は既に夕日も沈み、随分と明るい月が辺りを照らしていた。[pcm]  幻想的な光。[pcm]  姿を隠した太陽に照らされて、姿を隠していた月が現れる。[pcm]  互いにいつも一緒におり、それでいて、距離はひどく遠くて。[pcm]  おおっと、なんだか今日は詩人じゃないか、俺。[pcm]  (立ち絵:通常 中央表示)  紗耶「今日はまた随分と綺麗な月ね」[pcm]  夏輝「全くだ。名月だね」  満月に至るには、ほんの少しだけ足りない月。[lr]  あと二〜三日もすれば黄金の光を見せてくれるだろう。[pcm]  紗耶「さて、夕涼みにでも行くわよ?」[pcm]  夏輝「あー、悪くないかもな」[pcm]  (立ち絵:ジト目1 差し替え)  紗耶「あら?随分簡単に決めるのね。アンタのクセに……世界滅亡かしら」[pcm]  夏輝「俺の気まぐれがそんな規模で世界に影響を及ぼすとは思わなかったぜ」[pcm]  (立ち絵:通常 差し替え)  紗耶「ま、良いわ。行くわよ」[pcm]  夏輝「どこへ?」[pcm]  (立ち絵:強気1 差し替え)  紗耶「まぁまぁ、ちょっとそこまで、よ」[pcm]  夏輝「だから何処だと……」[pcm]  紗耶「アンタは黙って来ればいいの。さっさとしなさいよ?」[pcm]  最初は多少なりともムッと来ていた紗耶の独断専行ッぷりも、最近では日常の光景と化してしまった。[pcm]  慣れって怖いね?[pcm]  (画面暗転、立ち絵消去)  テレビの電源に扇風機、照明。全ての電源をカットしたのを確認して、俺も玄関へと向かう。[pcm]  海の潮騒が、随分と大きな気がした。[pcm]  (背景:叙留樹の玄関(夜))  海の上にはいくつかの灯りが点々と灯っており、人々の営みを感じさせる。[pcm]  黒に塗りつぶされた海の上にポツポツと浮かぶ黄色い点。[pcm]  サワサワと木々を揺らしていく、少しだけ冷たい風が心地よい。[pcm]    (背景:星空)    夏輝「おー」[pcm]  空を仰ぎ見れば、まるで街の明りを全て空に浮かべたかのような輝きがある。[pcm]  生憎と星座には詳しくないのだけれど、あの星だけはわかるぞ。[pcm]  夏輝「なあ、北斗七星の横にある蒼い星が、アレだろ?」[pcm]  紗耶「アンタには何が見えているのよ……」[pcm]  ……しまった、これは見えてはいけない星ではないか![pcm]  ブルブル。[pcm]  何も見えてない、何も見えてないよ。[pcm]  (背景:叙留樹の玄関(夜)、立ち絵:通常 中央表示)  夏輝「んで、どこに行くんだ?」[pcm]  紗耶「とりあえずあっちの方ね」[pcm]  紗耶が指差した方向は、街灯一本立っていない、漆黒というべき闇が広がっている。[pcm]  ちなみに、俺たちの装備、懐中電灯二本。[pcm]  夏輝「中々にチャレンジ精神旺盛だな。熊の朝食になるのは勘弁願いたいんだが」[pcm]  紗耶「バカねぇ。道さえ覚えていればどうにでもなるわよこれくらい」[pcm]  夏輝「そういえばさ、『懐中』って割には懐中電灯ってデカいよね」[pcm]  (立ち絵:ジト目3 差し替え)  紗耶「どうでもいいことで話をそらそうとするんじゃないわよ?」[pcm]  夏輝「ちっ、バレてたか」[pcm]  (立ち絵:複雑2 差し替え)  紗耶「全く、この根性無しは……」[pcm]  夏輝「なんつーか根性無しって言われると、どこぞの先輩を思い出すよな」[pcm]  (立ち絵:怒1 差し替え)  紗耶「あぁもう!どうでもいいからさっさと来なさい!」[pcm]  また怒られた。[pcm]  仕方が無い、素直に従うことにしようか。[pcm]  (立ち絵:通常 差し替え)  紗耶「ほら、これ貸してあげるわ」[pcm]  そういって俺の前に現れたのは、どこにでもあるようなホワイトのママチャリ。[pcm]  少しだけゆがんだカゴが親しみやすさを演出しております。[pcm]  次いで紗耶が乗ってきたのは、[pcm]  夏輝「……随分乗り物に差があるな」[pcm]  紗耶が乗ってきたのはなんとも立派なMTB。[pcm]  メインの色はレッド、そしてフレームには小さな炎の模様。[pcm]  (立ち絵:ういんく2 差し替え)  紗耶「こっちは私専用、そっちは共用。以上。さぁ、行くわよー」[pcm]  夏輝「なんという」[pcm]  素直に出かけることを承諾したのを後悔しつつ、俺もママチャリに乗る。[pcm]  ……ママチャリにしては乗り心地良いな。[pcm]  手入れが行き届いているというかなんと言うか。[pcm]  夏輝「結構自転車好きだったりする?」[pcm]  (立ち絵:喜1 差し替え)  紗耶「ええ、こう、ズバーっと走れるのは面白いわよ」[pcm]  夏輝「……なるほど」[pcm]  紗耶、スピード狂疑惑浮上、と。  自転車のランプを付けて、走り出す。  (BGM1000ミリ秒フェードアウト)  (立ち絵消去、背景:夜の田舎道、BGM:流れゆく景色)  信号の少ない田舎道。[pcm]  自転車のペダルを踏めば踏むほど、止まることなく加速を続ける。[pcm]  確かにこれは、ちょいとばかり気持ち良いかもしれない。[pcm]  夏輝「なぁ!結局どこに行くのさ!つーかあと何分くらい!?」[pcm]  紗耶「最高の場所へ行くの!そして大体十五分位よ!」[pcm]  十五分って、長いんだか短いんだかわからんな。[pcm]  まぁ、一度了承した以上途中で抜けるわけにも行かないだろう……[pcm]  坂上る。[pcm]  あ、野良猫。[pcm]  坂下る。[pcm]  坂上る。[pcm]  あ、また野良猫。[pcm]  坂下る。[pcm]  地味にキツい勾配がじわじわと体力を奪っていく。[pcm]  美富島、思った以上に凸凹してるなぁ……[pcm]  夏輝「結構……キツいな……」[pcm]  紗耶「これくらいならまだまだでしょ?」[pcm]  夏輝「くそっ、流石に島に住んでいるだけあるよ……」[pcm]  紗耶「まぁ、本土の学校がお休みの間だけだけどねー」[pcm]  つーことは、普段は町に住んでいるのかよ。[pcm][pcm]  そういやこの島、学校らしい学校が殆ど無かったような。[pcm]  夏輝「ボーナスポイント三十のキャラと五のキャラは全然違うな」[pcm]  紗耶「ほらほら!あと少しよー!」[pcm]  夏輝「それって何分くらいだ!」[pcm]  紗耶「大体十分くらいよ!」[pcm]  ……まだ道は長い。[pcm]  お兄ちゃん、挫けそうだよ?[pcm]  (BGM:1000ミリ秒フェードアウト、SE:梟の鳴き声とか、不気味な感じの を継続)  結局アレから二十分位走って、ようやっと目的地に着きました。[pcm]  着いたところは深い森の手前。[pcm]  うっそうとした針葉樹たちが生い茂る、絵に描いたような森林だ。[pcm]  夏輝「……夜に森へ入るのは自殺行為だってばっちゃが言ってた」[pcm]  (立ち絵:複雑1 差し替え)  紗耶「誰よばっちゃって。普通はそうかもしれないけど、子供の頃から来てるのよ?今更迷ったりなんかしないわよ」[pcm]  自転車を降りて、懐中電灯を点灯。[pcm]  うわ、なんと頼りない。[pcm]  (立ち絵:通常 差し替え)  紗耶「さて、行くわよ」[pcm]  夏輝「肝試しじゃないんだからさ……」[pcm]  (立ち絵:喜1 差し替え)  紗耶「あとね、私からはぐれると捜索隊出さなきゃならないから気をつけてね?」  ……肝試しってレベルじゃねぇぞ。  (立ち絵消去)  ガクブルモノだが、自信満々に森へ足を踏み入れていく紗耶を放っておくわけにもいかず、俺はホイホイと付いていくのだった。  俺って良い人だなー。[pcm]    (500ミリ秒暗転した後、背景:夜の森の中、暗転解除。)  紗耶の後について進むのは獣道。[pcm]  生い茂った雑草が素足に擦れる度、いやな痒さが足を襲う。[pcm]  夕涼みの意味?[pcm]  そんなものは既に十回ほど考えたさ。[pcm]  ザクザクと、ザクザクと。[pcm]  足元の雑草を踏みしめるたびに足音が響く。[pcm]  夏輝「なぁ、目的地ってどこだよ。つーか戻れるのか?本当に大丈夫か?」[pcm]  (立ち絵:強気2 中央表示)  紗耶「目的地はもう少し先。戻ることは心配なし。あと私をナメないで」[pcm]  (立ち絵消去)  いつものことでしたね。[pcm]  空を見上げてみれば、少し前まで見えていた月は欠片も見当たらない。[pcm]  木々だけではなく、雲までもが邪魔しているらしい。[pcm]  なんとも不気味な雰囲気だ。[pcm]  下手な三流ホラーより怖いぞ。[pcm]  (SE:「ガサガサ」といった感じの何かが動く音。)  ……そこの茂み、なんか動いているしな。[pcm]  近くに川でもあるのか、かすかに聞こえてくる水音がホラーだ。[pcm]  紗耶「うーん、去年より草が多いわね……やっぱり、ここもあまり人が来なくなってきたのかしら……」[pcm]  少しだけ寂しそうな声。[pcm]  紗耶の後ろに俺が着いていく隊列なので表情を伺い知ることは出来ないが、若干悲しそうでもある。[pcm]  まぁ確かに、自分の故郷から人が離れていくということは寂しいことかもしれない。[pcm]  過疎化も進んでいるみたいだしな、この島。[pcm]  でも、ここに草が生えるのは普通じゃないのか?[pcm]  好んで来るような人もいないだろうし。[pcm]  夏輝「なー、まだかー?」[pcm]  紗耶「あぁもう、少しは黙って着いて来れないの……っと」[pcm]  立ち止まる。[pcm]  夏輝「やっと目的地か?」[pcm]  紗耶「ええ、こっちね。そこの斜面を下るわよ」[pcm]  指差した先には、僅かな斜面。[pcm]  これくらいなら俺でも何とか下れそうだ。[pcm]  (画面暗転)  夏輝「あいよ……っと、とと」[pcm]  紗耶「あら、意外。転ぶかと思ったのに」[pcm]  夏輝「この程度ならなんとかなる……うわ、これは……」[pcm]  (SE終了、BGM:流れる時の中で、背景:珍川)  <珍川の背景には『蛍のように不規則に動く、いくつかの淡い黄色の光』のエフェクトをお願いします>    まず目に入ったのは、川。[pcm]  そして、空に浮かぶ星を全て地面にぶちまけたような輝き。[pcm]  不規則に舞い続ける数多の輝きは、すぐに蛍だとわかった。[pcm]  宵闇に包まれた森の中、ここだけが幻想的な灯火で照らし出されている。[pcm]  なんとも。[pcm]  なんとも言えない。[pcm]  『綺麗』や『美しい』といった言葉では、表せない光景。[pcm]  光の内の幾つかが俺たちの元へと近寄り、離れる。[pcm]  手を差し出せば掴めそうだ。[pcm]  (立ち絵:ういんく1 中央表示)  夏輝「……いや、もう、すげぇ」[pcm]  情けないことに語彙の少ない俺ではその程度の賛辞しか浮かばない。[pcm]  それでも紗耶は満面の笑みを浮かべて、光の中へと歩み寄っていく。[pcm]  最初は避けた蛍たちも、少しずつ、少しずつ、紗耶の元へと近寄っていく。[pcm]  紗耶の頬や、腕を照らし、舞い続ける。[pcm]  (背景消去、一枚絵:蛍の光の中で微笑む紗耶)  紗耶「ふふん、どう?」[pcm]  誇らしげな微笑。[pcm]  ああ、全く。[pcm]  夏輝「最高すぎるな」[pcm]  紗耶「でしょ?」[pcm]  蛍たちが紗耶に近づき、離れ、舞う。[pcm]  幻想的な光に囲まれた紗耶がなぜか、とても可愛く見えたり。[pcm]  紗耶「? なによ黙って。まぁさか、私に見蕩れてんの?」[pcm]  夏輝「ああ」[pcm]  ……あれ?[pcm]  俺、今なんて言った?[pcm]  とりあえずボーッとしてしまって何を言ったか覚えていないんだが……[pcm]  (一枚絵解除、背景:珍川、立ち絵:照れ2A 中央表示)  うわ紗耶がすげぇ茹だこ状態。[pcm]  これはギネス級ですよ!?[pcm]  紗耶「あ、っと、えーと……」[pcm]  夏輝「……スルーよろしく」[pcm]  (立ち絵消去、背景を夜空に変更。蛍のエフェクトあり(?))  うん、まぁ。[pcm]  こんな気分になる日もたまにはあるということで、どうよ。[pcm]  (end)