紗耶視点シナリオ
背景:叙瑠樹キッチン
紗耶立ち絵:通常

紗耶 「ふう」

夏輝 「洗い物、終わったか?」

沙耶 「うん。終わったよ」

夏輝 「じゃ、ちょい出かけてくる」

沙耶 「はいはい。頑張ってねー」

夏輝 「あいよー」

夏輝は今日も、『思い出探し』の旅に出ている。

すごく意気込んでいるのが、本当は嬉しい。

夏輝は気付いてないかもしれないけれど、私は昔から……今でも、アイツの事が好きだ。

一緒にいてあんなに気を許せる相手は、今まで他に出会った事が無い。

うまく説明出来ないけど、癒し系とでも言うべきなのか。落ち着く。

夏輝も言ってたけど、一緒にいると、楽しい。

父さん達の旅行の話が出た時だって、夏輝に逢えると喜んだ。実は、部屋で一人で踊りだすほど嬉しかった。

でも……私はこんな性格だし、素直になれない事が殆ど。恥ずかしさを誤魔化すために、つい夏輝を蹴ったり殴ったりしてしまう。

昔からそんなノリだったから、突然変えるのも変だと思うのもあるけれど。

紗耶 「返事なんて決まってるみたいなもんなのに……」

私との思い出を何も覚えていない夏輝にちょっと苛立って、あんな条件だしてしまっただけ。

紗耶立ち絵:照れ

紗耶 「こ、こ、今夜あたり、いいよ、って答えちゃおうかなぁ……」

うわ……ちょっと思っただけなのに、顔が熱くなるのが自分でもわかる。

紗耶立ち絵:通常

夏祭り後回想

夏輝 「俺、昔溺れたときに記憶喪失になってるんだよ」

あんな話、本当だとは思いもしなかった。記憶喪失なんて、本やドラマの中で見るくらいで、まさか身近に居るとは思わないじゃない。

結構苦労したのかな? そんなそぶりは見せないけど。

……でも、その事故、私も傍に居たっていうのよね。

紗耶 「記憶にないなんて、夏輝じゃあるまいし……」

覚えてないってスッキリしない。アイツはなんで平気なんだろ? 手っ取り早く事実確認しておきますか。

SE:足音
背景:叙瑠樹階段付近

ジーコロ、ジーコロロ……

電話のダイヤルを回す。

手元には、親が泊まるホテルの電話番号が書いてあるメモ。

SE:トゥルルルル……がちゃ

紗耶父 「はい、小翠です」

紗耶 「もしもし、お父さん?」

紗耶父 「おー、紗耶か。夏休み楽しんでるか?」

紗耶 「まあね、それなりに」

紗耶父 「まさかと思うが、何も間違いは起きてないよな?」

紗耶 「何言ってんの、電話代もったいないから、用件のみつたえまーす」

紗耶父 「お前という娘は淡白だな。父さん寂しい」

紗耶 「それなりに親孝行はしてるつもりですけど?」

紗耶父 「ハハハ……。紗耶には敵わないな」

紗耶 「ちょっと聞きたいんだけど。昔夏輝が溺れた事があったらしいじゃない?」

紗耶 「その時、私って現場にいたの?」

紗耶父 「え?」

紗耶 「だから、夏輝が溺れた時、私そこに居たのかって」

紗耶父 「電波が遠くてよく聞き取れないんだが」

紗耶 「お父さん。これ携帯電話じゃないから、そんな事ないはずよ」

紗耶父 「そうか、文明は進歩してるんだな」

紗耶 「お父さん?」

紗耶表情:怒り

紗耶父 「紗耶ちゃんそう怒らないで。当時の事は俺もそう覚えていないんだよ」

紗耶 「結構大変だったみたいだけど? そんな事忘れる?」

紗耶父 「あー、年かな? 気分はまだまだ若いけど、年なのかな? ははは」

この人は本当に嘘つけない人ね。

話す気が全くないという事だけはわかった。

紗耶 「わかった、もういいわ。他をあたってみるから」

紗耶父 「あー、きっと皆も忘れてるかもしれないぞー。お年寄り多いからねー」

紗耶 「あー、はい、そうですねー。じゃね」

SE:電話切る音

紗耶 「あそこまで隠されると余計に気になっちゃうじゃない」

お父さんも、そろそろ娘の性格を把握しておいた方がいいんじゃないかしら?

紗耶 「私も思い出探しと参りますか」

もやもやとしているより、動いている方がいい。

手早く準備をし、外へ出かけた。

背景:民家のある風景(畑とかあるのってあったっけ?)

眩しい。

夏の光は強烈だなあ。

家を出て、人の姿を探しながら歩く。

今は本土の方の学校へ行っているとはいえ、夏輝よりはこの島に居る月日がずっと長い。

どこら辺に行けば人が居るかくらいは、大まかに把握している。

畑の方に、見知った人影を見つけた。

紗耶 「おばさーん! こんにちはー」

おばさん 「あら、紗耶ちゃん、こんにちは」

紗耶 「今日も暑いのに、畑仕事ご苦労さまです」

おばさん 「いつまでこの暑さ、続くんだろうねぇ。そろそろキュウリの収穫も終わりごろね」

おばさん 「紗耶ちゃん。キュウリと茄子、それとトマト持っていく?」

紗耶 「わ! いいんですか? いつも貰ってばかりなのに」

おばさん 「夏輝ちゃんも来てるんでしょ? 育ち盛りの男の子だもの。沢山食べるんじゃない?」

紗耶 「あはは。確かによく食べてますね」

おばさん 「紗耶ちゃんの手料理がよっぽど美味しいんだねえ」

なんだか気恥ずかしい。

おばさん達と話す時、たいてい私は褒め殺しにあう。ここは愛想笑いで流すしか。

紗耶 「……あの、おばさんは知ってる? 夏輝が海で溺れたって話」

おばさん 「え? さっき元気に海の方へ歩いていってたけど……まさか?」

紗耶 「あ、いやいや、最近の話じゃなく、昔の話。子どもの頃の話ですよ」

おばさん 「ああ、良かった……。昔の事ね、昔の」

おばさん 「あの時はびっくりしたわねえ。紗耶ちゃんが夏輝ちゃんが溺れたーって騒いでて……」

紗耶 「え? 私が?」

おばさん 「そうよ。私は何も出来ないから、遠巻きに見ながら心配する事しか出来なくてねえ」

おばさん 「でも良かったわ。命に別状なくって」

紗耶 「事故の時の事、もっと詳しく話してもらえます?」

おばさん 「詳しくは知らないわね。しばらく安静にって診療所の先生も言ってたから。夏輝ちゃんのとこへお見舞いも皆行けなかったのよ」

おばさん 「まあ、夏輝ちゃんが今元気なら、それでいいじゃないの」

紗耶 「う、それはそうなんだけど……」

おばさん 「それより、折角夏輝ちゃんが来てるんだから、一緒に遊びに行けばいいのに」

紗耶 「え? いや、別にアイツは親がいないから、ここで過ごしてるだけで、私だってただ世話するだけで……」

おばさん 「ふふ、久しぶりに会うと照れる? 女の子だねぇ」

紗耶 「もう、大人は皆そうやって、からかうんだから」

私が居たって事は確認出来たけど、あまり詳しい話を知らないみたいね。

あやめさん達にあっても、夏輝がきいたくらいの話しかきけないかもしれないし。

夏輝の所へ行って、何か進展あったかきいてみようかな。

紗耶 「お昼も近いんで、夏輝呼びに行きます、お邪魔しました」

おばさん 「あらそう? じゃあ帰るくらいには、ここに野菜入れた袋置いておくから、持っておいき」

紗耶 「はい。ありがとうございます」

足早に畑を後にする。

背景:埠頭

紗耶 「あ、いたいた」

防波堤のところで、寝転がっている夏輝の姿を見つけた。

全く……。頑張るとかいいながら、もうバテたのかコイツは。

紗耶 「そろそろお昼よ。ほら、起きて」

夏輝 「もうちょい休むー」

紗耶 「こんなところで寝ると落ちるわよ。起きなさいってば」

仰向けに寝転んだ夏輝を揺さぶる。

SE:どくん(心音)

目を閉じて眠っている夏輝の顔に、何かが重なった。

……気のせい、だろう。

夏輝 「ちょっと。あとちょっと。あと5分……」

沙耶 「ほーら。ちゃっちゃと起きる!」

SE:どくん(心音)

再び。夏輝を揺さぶった瞬間。私の頭がおかしくなったのだろうか。

目の前の夏輝に、何かが重なる。

青白く、ぐったりした……小さな、夏輝の顔。

紗耶 「夏輝!」

怖くなって、更に強く夏輝の肩を揺さぶった。

夏輝 「うお!」

夏輝 「なんだよ。起きるよ、ちょっとくらい待ってくれても……」

面倒くさそうに身体を起こす夏輝。

良かった。起きてくれた。

……良かった? 起きるのは、当然だろう。

私は何を……怖がっている?

心臓が激しく動く。頬を伝う汗が冷たい。

夏輝 「ん? どした? 紗耶」

紗耶 「っ……。な、なんでもない。日差しが強くて眩暈がしただけよ」

夏輝 「太陽は強いなー。紗耶に眩暈を覚えさせるとは」

紗耶 「あは……そうね」

夏輝 「?」

夏輝 「紗耶?」

憎まれ口にも反応出来ない。

気持ち悪い。

はっきりしないと気持ち悪い。

思い出せない部分があるという事で、強い焦燥感に苛まれる。

紗耶 「ねぇ、夏輝。アンタが溺れた時って」

夏輝 「祭りの時に話した事が、俺の知ってる事の全部だよ」

紗耶 「うん、わかってる。でも、新しい情報とか見つかったかなって」

夏輝 「すまん。まだ何も……」

紗耶 「あー、そういう辛気臭い顔やめて。そんなつもりで言ったんじゃないし」

無駄に罪悪感にかられる夏輝を見て、少し苛だった。

……違う。

悪いのは夏輝じゃない。多分、悪いのは……私。

夏輝 「大丈夫か? 紗耶こそ、少し休んでいった方がよくね?」

紗耶 「いや、いい。大丈夫だって」

紗耶 「それより、昼ご飯」

夏輝 「いいから、少し休めって」

夏輝に引き止められ、仕方なくその場で休む。

SE:波の音

少し目を閉じると恐怖が増した。

怖い。

紗耶 「ここは嫌。どこか、他所へ行きたい」

夏輝 「仕方ねえな、ほら」

夏輝が私を力強くひっぱり起こしてくれる。

SE:ごぼごぼ (水音)

脳内に嫌な音が響く。

沙耶 「っ……!」

大変だ。夏輝につかまらなきゃ。

夏輝 「おあっ!」

夏輝 「いきなりしがみつくなよ!」

紗耶 「バ……バランス崩したのよ! アンタが、強くひっぱるから!」

夏輝 「そんなに強かったか?すまん」

わけがわからない。

夏輝のせいじゃない。

つい、夏輝に責任をなすりつけてしまったけれど。

気持ち悪い。スッキリしない。

夏輝は……悪く、ない。きっと、悪いのは……私。

背景:叙瑠樹居間の夜

夏輝 「紗耶。キュウリ切ったけど、お前も食う?」

昼におばさんから貰ったキュウリを食べようと、夏輝がキッチンの方から叫んでいる。

紗耶 「……いらない。先に寝る」

海から帰ってきてずっと、けだるい。

夏輝 「昼もあまり食ってないし、本当に大丈夫なのか?」

紗耶 「うん。大丈夫、だよ」

紗耶 「おやすみ……」

夏輝 「おう、おやすみ」

背景:紗耶の部屋(あるのか!?)

紗耶 「明日あたりに、お父さんを問い詰めよう」

このままじゃ滅入っちゃいそうって言えば陥落するかな。

兎に角、今日はもう休もう。

SE:ぱち 電気を消す音
背景 紗耶の部屋(明かりを落とした状態)

背景 ゆっくりと画面を真っ白に。
背景:埠頭
SE:波の音
立ち絵なしの為少々地の文が増えます。

紗耶 「なーつーきー!」

夏輝 「お、紗耶。来たか」

小さな男の子と女の子。どうやら、待ち合わせをしていたようだ。

……ああ、この二人は幼い頃の私と夏輝だ。

夏輝 「遅いよー。昼ご飯食べたらすぐ、一緒に魚釣りし……よ……って……」

紗耶 「ふふー。どう? この服、可愛いでしょ」

白いワンピースを魅せつける様にくるりと回る。

お母さんにおねだりして作ってもらった、『初めての女の子らしい服』。

出来上がって、嬉しくて、すぐ着て遊びに出たんだ。

夏輝 「あー、うん。いつもの紗耶と違うね。か、可愛いと思うよ」

目をそらしたら見えないじゃない。

……あ。顔を真っ赤にしてる。照れてるんだ。

夏輝 「そういう服って『お出かけ用』なんじゃねーの? 汚れちゃうよ?」

紗耶 「だから、夏輝との『お出かけ』で、着てるんじゃない」

違う。本当は、夏輝に最初に見せたかったから。

紗耶 「ねえ。もう魚釣れた?」

夏輝 「うん! 今日は大漁だぞ! バケツの中見てみろよ」

バケツの中には二匹の魚が元気よく跳ねている。

紗耶 「すごーい! 今日の夕飯はご馳走だね!」

夏輝の顔を覗き込む、幼い私。

見ていてわかるのは、意識して女の子らしく可愛く振舞おうという、健気な女心。

夏輝 「あ、あんまり近寄るなよー。竿持ちにくいだろ」

夏輝の方も、そんな私に照れて困惑している様子。

普段なら押し返したりするのに、夏輝は幼い私に触ろうともしない。

紗耶 「いつもと同じくらいしか近づいてないよ」

夏輝 「うっるせなー。そこの網もって、魚釣れた時の為にかまえとけ」

紗耶 「はーい」

夏輝 「あっ!」

紗耶 「あ! お魚、かかった!」

夏輝 「へへ。すぐ釣りあげるからな!」

夏輝は小さい体で、力いっぱいに竿を振り上げる。

しかし、竿は曲がるばかりで、なかなか魚は水面に浮いてこない。

夏輝 「ぐっ……おも……いっ!」

紗耶 「おっきいの?」

夏輝 「デカイっ! 一気に引き上げるぞ」

素早くリールを巻く夏輝。

SE:ばしゃ(水音)

夏輝 「重っ!」

紗耶 「あ、網っ!」

夏輝 「紗耶! まだ!」

紗耶 「あ、きゃっ……!!」

SE:ざぶん(派手な水音)
背景:海の中
SE:ぼこぼこ(水音)

どうやら、私は足を滑らせて、海の中へ転落したようだ。

目を開けると、水面に差し込む光が眩しく見えた。

私の口からこぼれ出る息が泡となって海上へ向かって昇っていく。

紗耶 「(……苦しい……早く上にあがらなきゃ!)」

自信があった。私は泳げると。

すぐに陸にあがって『落ちちゃった』なんて、照れ笑いするしかないな、なんて考えられる程。

けれど、そんな余裕など、すぐに泡となって消えていった。

紗耶 「(!)」

紗耶 「(スカートが足に絡み付いて離れない!)」

足に絡みついたスカートは、動けば動くほど巻きつく様に思えた。

足が、思うように動かない。

私の体は、どんどんと沈んでいく。

頭上にきらめく水面が、どんどん遠くなっていく。

慌てた私は口を開く。そこから、わずかに残っていた空気が逃げていく。

あとは混乱と恐怖。それしか残っていなかった。

鼻にも口にも、海水が容赦なく流れ込んでくる。

鼻の奥が痛い。喉の奥が痛い。

もう駄目だ。意識が……遠くなる。

海面が遠く、そしてぼんやりとしていく。

SE:ざぶん(水音)

海面が、揺らめいた。そして、何かがこちらへ泳いでくる。

紗耶 「(夏輝……)」

夏輝の顔が見える。

海の闇にひきずり込まれそうになっていた私に、光が見えたようだった。

夏輝が手を伸ばしてきた。私は怖くて、怖くて、強く夏輝にしがみついた。

夏輝が、しがみついた私を跳ね除けようとする。

……違う。私の体は、真横へ移動させられた。

背中に、何かが当たった。コンクリートの、テトラポットだ。

夏輝が、私に勇気をくれた。

その勇気が、私の体に残った力を振り絞ってくれた。

必死に、テトラポットを登る。海面にあがり、必死に求めた空気を、肺に満たす。

夏輝も、すぐ後についてくると信じて。

信じて……振り返る。

夏輝は、少し、遠く。

テトラポットにしがみついては……いなかった。

海中をたゆたう、夏輝の体。

紗耶 「夏輝!」

夏輝 「……」

夏輝が、何かを言いかける。しかし、その口からは大きな泡が出るだけだった。

伸ばされた手が、遠くへ。遠くへ。

……沈んで、いく。

紗耶 「だれかああああああああああああああああああああっ!!」

紗耶 「助けてーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

気が狂わんばかりに叫んだ。声がつぶれるんじゃないかと思うほど。

あれだけ必死に求めた空気の全てを振り絞って。

近くに居たのだろうか。漁師のおじさんが走ってくるのが見える。

おじさんは私に構わず、すぐに飛び込んで海に潜る。

………

……

二人が少しでも早く顔を出してくれるのを願った。

その時間がどれくらいだったかなんて、わからない。

ただ、とてつもなく、果てしなく長い時間だったような気がする。

ようやく顔を出してくれた時には、握りこんだ私の手は血の気が失せて真っ白になっていた。

紗耶 「夏輝! 夏輝い……」

オッサン 「紗耶ちゃん、他の大人を呼んできてくれ! 大声あげて走っていけ!」

紗耶 「夏輝ぃ……」

オッサン 「早く行け!」

紗耶 「! ……はい!」

おじさんに怒鳴られて、はじけるように民家の方へ走り出した私。

紗耶 「たすけてーーーーーーー! 夏輝が溺れちゃったよーーーーーーーー!」

力の限り叫んだ。

紗耶 「誰か来てーーーーーーー! 夏輝を助けてーーーーーーーーーー!」

喉が潰れても構わない。

気を抜けば、膝が崩れ落ちてしまいそうだった。

大人たちが、何事かと集まってきた。

誰かが『医者だ!』と言った。

私は来てくれた大人達を、夏輝達のいる場所へ連れて行く。

紗耶 「夏輝が……夏輝が……」

手足が痺れてきた。

気付かないうちに私は泣いていた。

オッサン 「こっちだ!」

助けてくれたおじさんが心臓マッサージをしている。

青白く生気の無い夏輝の顔。

紗耶 「夏輝! 夏輝! 死んじゃヤダよっ!死んじゃやだよう……」

冷たい夏輝の手を握り、何度も何度も何度も声をかける。

夏輝 「ごぼっ……!」

夏輝の口から水が吐き出される。

紗耶 「夏輝! 大丈夫? 夏輝!」

握った手は、まだ握り返される事がない。

夏輝の口が開き、かすれて音にならない言葉を発する。

夏輝 「……だ……れ?」

……

頭が、真っ白になった。

背景:紗耶の部屋

紗耶 「……っ!」

SE:がばっ(蒲団から起き上がる音があれば)

紗耶 「はあ、はあ……」

自分の両腕をつかむと、パジャマがぐっしょりと汗を含んでいた。

紗耶 「……そうだ。あの日の事故は……」

紗耶 「夏輝の、あの事故は……」

紗耶 「私の責任だ……」

[END]